OVERCAST (オーヴァーキャスト)

Brian Fair: Vocals
Mike D’Antonio: Bass
Pete Cortese: Guitar
Scott McCooe: Guitar
Jay Fitzgerald: Drums

Biography

OVERCASTは、この5人のメンバーよって‘91年8月、アメリカ東海岸、マサチューセッツ州はウースターにて結成された。マサチューセッツ州都のボストンから西に位置するこのエリアは、’90年代中期よりハードコアとメタルの異種交配が盛んに行われてきた土地で、現在では、SHADOWS FALLやKILLSWITCH ENGAGEといったビッグ・バンドに続けといわんばかりに、UNEARTH、ALL THAT REMAINS、THE ACACIA STRAINなどが活動しているのは周知の事実。これら一連のバンドを総称するときに、”MAメタル”と呼ぶことがあるが、言わずもがな、このMAというのはマサチューセッツ州の略号であり、'80年代に栄華を築いたLAメタルを文字ってそう呼ばれるようになった。その起源は’90年代中期に、OVERCASTや、現KILLSWITCH ENGAGEのギタリストであるAdam Dutkiewiczや、現SHADOWS FALLのギタリスト、Jonathan Donaisが在籍したことでも知られるAFTERSHOCKが台頭してきたあたりだったと記憶しているが、そもそも、MAメタルというのは、この地の発するハードコア・バンドが、よりメタル色の強いサウンドを奏でるようになったことに対し、冷やかしや自嘲の意味を込めて、そう呼んだのがきっかけ。しかしながら、今やMAメタル・バンドの活躍はNWOAHM(New Wave Of American Heavy Metal=もちろんNWOBHMのパクリ)というムーヴメントにまで発展し、アメリカのメタル・シーンにとって欠かせない存在となっている。数多くの重要人物と人気バンドが登場するMAメタル・シーンを網羅すると、一大ファミリー・ツリーが出来上がるのだが、実はその中身を紐解くと、同じ地元のハードコア好きの高校の同級生の集まりだったという事実が浮かび上がるのが、興味深いところではある。だが、その中でも、やはりAFTERSHOCKとOVERCASTはMAメタル史上を語る上では外せない二大元祖的な最重要バンドなのである。

それでは、次にOVERCASTのディスコグラフィーを年代順に追っていきたい。そのほとんどが既にレーベルが閉鎖されていたりして現在では入手困難なものばかりだが、実は、新作"REBORN TO KILL AGAIN"の収録曲の殆どは、過去の既発曲の再録ヴァージョンとなっている。だからこそ冒頭で述べたように、この新作を聴いたときに衝撃を受けたのだが、つまり、この新作"REBORN TO KILL AGAIN"は、復活を果たしたOVERCASTのニューアルバムにして、今までのディスコグラフィーから抜粋したベスト盤とも呼べる内容になっている。オリジナル・ヴァージョンがどの作品に収録されていたのかを知る意味でも、今一度ここで整理しておくことにしよう。

"BLEED INTO ONE"
(EP、1992、EXCHANGE RECORDS)
M-13 Bleed Into One
4曲入りのファースト7"EP。新作をラストを飾る曲が、バンドとして一番歴史の古い曲となっている点がオールド・ファンの心をくすぐるが、今、この曲を聴いても色褪せないということから、既にこの時点でOVERCASTの個性は確立されていたことがわかるだろう。

"EAST COAST ASSAULT"
(LP、1992、TOO DAMN HYPE RECORDS)
再録曲なし
アメリカ東海岸を中心に活動するハードコア・バンドを集めた名作コンピレーションで、このコンピのお陰で彼らの名前も世界中に広まったと言っても過言ではない。他はMERAUDER、CONVERGE、LIFE OF AGONYらといった錚々たる面子。

"EXPECTATIONAL DILUTION" (LP、1994、ENDLESS FIGHT RECORDS)
M-1 Diluting Inertia / Grifter
M-6 As A Whole / Two Degrees Below
9曲入りファーストアルバムで、オリジナルはENDLESS FIGHT RECORDSからのリリースだが、後の'97年に、"BLEED INTO ONE"の4曲を追加収録したリマスタリング盤CDがEDISON RECORDINGSより再発されている。こちらは現在でも入手可能。

"STIRRING THE KILLER" (EP、1995、INNER RAGE RECORDS)
M-1 Diluting Inertia / Grifter
フランスのレーベルからのリリースとなった2曲入りの7"EP。おそらく限定500枚プレス。

"OVERCAST / ARISE Split" (EP、1996、MOO COW RECORDS)
M-3 Seven Ft. Grin
同郷マサチューセッツ州のバンド、ARISEとのスプリットEP。各バンド1曲づつ収録。

"BEGGING FOR INDIFFERENCE" (EP、1996、EDISON RECORDINGS)
M-9 For Indifference
M-11 Fates Design
7”EPとCDの両フォーマットでのリリースがあるが、CDの方は、ボーナストラックとして"STIRRING THE KILLER"の2曲を追加収録した4曲入り。ちなみに7”EPは666枚限定でナンバリング入り。

"FIGHT AMBITIONS TO KILL" (LP、1997、EDISON RECORDINGS)
M-2 Root Bound Apollo
M-3 Seven Ft. Grin
M-4 Filter Of Syntax
M-7 Spun
M-8 Your (destructive) Self
M-10 Styrofoam Death Machine
M-12 Apocalypse Upon Us
それまでのEPの再録を多く含む、セカンド・アルバム。新作の殆どはこのアルバムからの再録曲ということからもわかるように、彼らのキャリアの集大成的な名盤中の名盤。オリジナルは現在でも入手可能。新作"REBORN TO KILL AGAIN"はこのアルバムの続きであるという意味を込めて、タイトルに引っ掛けたものであることがすぐにわかる。

"IN THESE BLACK DAYS Vol.4" (LP、1998、HYDRAHEAD RECORDINGS)
再録曲なし
7”EPの2枚組でリリースされたBLACK SABBATHのトリビュート・シリーズで、OVERCASTは”National Acrobat”をカヴァー。他のバンドはCAVITY、CABLE、JESUITが収録。

以上が、OVERCASTのオフィシャル・ディスコグラフィーである。そして、その後セカンド・アルバム”FIGHT AMBITIONS TO KILL”に発売に伴う全米ツアーをSHAI HULUD、DISEMBODIEDとともに行った後、’98年11月にOVERCASTは解散を表明。ご存知の通り、そのDNAは SHADOWS FALL、KILLSWITCH ENGAGEへとが受け継がれていくわけだが、今、こうして遡ってOVERCASTの楽曲を聴いてみると、当時の彼らは早すぎた存在であることがわかるだろう。
引きずるようなグルーヴと陰鬱なメロディー、そして、Brainの呪文を唱えるかのような不思議なヴォーカルラインが織り成すオリジナリティー溢れるそのサウンドを、彼らは自らの”DEVILCORE”と呼んでいたが、メタルコアやカオティック・ハードコアなんていう言葉がなかった頃から、彼らは明らかに異彩を放っていた。
解散後、'02年に地元のマサチューセッツ州で行われた『NEW ENGLAND METAL AND HARDCORE FEST』にて1度だけの再結成ライヴを行ったものの、それ以外にはここ数年間はまったく音沙汰がなかったOVERCASTが、なぜこのたび再結成をしたのか、このライナーを書いている時点では彼らの真意は定かではないが、今や似たようなサウンドのバンドが溢れ返って、メタルコア・シーンは頭打ちになったという声も少なくはない。 そんな中、遂にOVERCASTが帰ってきた。これが一体何を意味するのか、その答えは、"REBORN TO KILL AGAIN"を聴けばすぐにわかるだろう。

Text by 塀戸 門家(2008年10月)


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